カスタマージャーニーは、ユーザーのニーズに沿った商品・サービスを開発するのに役立つマーケティング手法です。アンケートやインタビューで得た情報を元にユーザーの購買行動を視覚化することで、それぞれの段階における課題を明らかにすることができます。今回は、カスタマージャーニーとカスタマージャーニーマップの目的や使い方、その作り方をご紹介します。
カスタマージャーニーとは、文字の通り「顧客の旅」のことであり、顧客が商品・サービスを認知してから購入・利用に至るまでの一連の流れを意味しています。カスタマージャーニーを理解する際には、時系列順に各フェーズにおけるタッチポイントとペルソナ(顧客)の心理状況・行動、そして課題点を把握することが必要です。これによって、有効的に、新しい商材の開発や、既存の商材の向上を実施するすることが可能になります。
また、カスタマージャーニーを視覚化したカスタマージャーニーマップの利用によって、ユーザーの現状を理解し、ユーザーの直面する課題やニーズなどのチャンスを発見できます。さらに、顧客体験のプロセスを線で理解することで、どこに綻びがあるのかを把握し、全体を改善するためのヒントを見つけることができます。
顧客が商品・サービスを認知してから購入・利用に至るまでのプロセスであるカスタマージャーには主に4つのフェーズがあります。それぞれ、「検討開始」「情報収集」「比較検討」「購入」と呼ばれます。
商品・サービスの購入・利用の前提として、それらに対する興味を抱いたうえで認知する必要があります。
購入・利用にあたって、その商品・サービスについてしっかり理解したいと考えた時に、顧客は機能や値段等の情報を収集し、また実際にレンタル等を通して使用感を試したりします。
顧客は、検討している商品・サービスについての理解がある程度深まったら、他の選択肢にも目を向け、比較します。
一連の流れを経て、顧客は商品・サービスの購入・利用に至ります。
上記のプロセスはあくまで一例であり、商品・サービスの性質によっては変わってくることも考えられるので、注意が必要です。
カスタマージャーニーにおけるタッチポイントとは、各フェーズで顧客の心理状態や行動に影響を与える媒体や状況のことです。例えば、「検討開始」のフェーズで、顧客がある商品を認知する際のタッチポイントは、SNSや家族・友人が考えられます。タッチポイントはどのフェーズにいるかに応じて変化するので、カスタマージャーニーの理解において重要な要素の一つとなっています。
ペルソナとは、商品やサービスの利用者像であり、分析の対象となります。カスタマージャーニーを考えていく際に、まずペルソナ(顧客)を設定することが必須となり、有効なカスタマージャーニーマップの作成ではペルソナをできるだけ具体的に設定する必要があり、年齢・性別・職業・家族構成・居住地・ライフスタイル等の情報を詳細に決定していきます。
ペルソナについて詳しく知りたい方は、「インタビューを通じたペルソナ調査の仕方とコツ~フォーマットも公開~」も参考にしてください。
カスタマージャーニーマップというのは、顧客体験、すなわちユーザーが製品やサービスと関わる一連のプロセスを可視化したものです。グラフ中に、ユーザーが商品・サービスを知ってから購買に至るまでのプロセスにおいてとった行動と、それに紐づく感情や思考をまとめていくことで、顧客の動向を時系列的に把握することが可能になります。
取り組むべき課題の特定こそ、カスタマージャーニーマップの要となる目的です。顧客体験を線としてストーリー化することにより、これまで見えていなかった課題を発見することができます。ユーザーが商品・サービスと関わるプロセスの中で、顧客の期待と実際の体験が乖離している部分を見つけ、それを課題として設定します。全てのフェーズの課題を洗い出すことができれば、解決すべき課題の優先度を明確にし、サービス改善のスケジュールを見直すこともできます。
カスタマージャーニーマップはユーザーが主語となるため、企業側の考え方から離れ、ユーザーを軸に発想を広げる効果を持ちます。一枚のマップの中に複雑な顧客体験をまとめ、ユーザーのことを容易に、網羅的に理解することができます。これにより、今まで考慮できていなかったニーズを新たに発見し、ユーザーの視点からサービス全体を見直すことができます。ただし、ユーザー目線でサービスを俯瞰することは、あくまで課題の洗い出しや優先順位を捉えるための方法ですので、第一の目的は「課題特定」であることを意識するようにしましょう。
チーム全体で1つのマップを共有することで、ユーザーや商材についての共通認識を持つことができます。商品開発の際には、営業や企画、宣伝など、様々なステークホルダーが関係するものの、互いにうまく連携が取れていないということも往々にしてあるのではないでしょうか。カスタマージャーニーマップがあれば、関係者の役割に関わらず、同一の顧客体験を俯瞰することができるので、全体でインサイトを共有し、課題を再認識することができます。
カスタマージャーニーマップ作成の前提となるビジネスゴールを設定します。「サービスの売り上げ不振の原因はどこにあるのか」、「新商品開発に際して、既存のものでカバーできていないニーズはあるのか」のように、論点や課題を設定した上で情報収集・マップ作りに取り組むことで、ブレのないマップを作ることができます。
カスタマージャーニーマップを作成するには、ユーザーの実際の体験についてのデータが必須です。ユーザーの行動や感情を引き出すインタビューを実施しましょう。インタビューの際には、課題や、それぞれの行動の際に感じた感情にフォーカスし、より事実に忠実なマップを作れる情報収集を心がけましょう。
カスタマージャーニーマップ全体の軸となる部分を設定します。
縦軸は、基本となる「感情」「タッチポイント」「行動」「課題」を入れ、商材やサービスに合わせて他の指針を追加するようにしましょう。
横軸には、ユーザーが商品・サービスと関わるプロセスを時系列で並べます。こちらも、商品によって多少違いはあるものの、「検討開始」「情報収集」「比較検討」「購入」といったフェーズで分けるのが基本です。顧客の感情に変化が生まれそうな部分の解像度をあげるとより分かりやすいマップになります。
それぞれのフェーズごとに、縦軸の項目を埋めていきます。はじめに行動・タッチポイントから埋めましょう。インタビューで得たデータを元に、それぞれの段階でどのような行動をしたのか書き込みます。その後、それぞれの行動においてどのようなタッチポイントが存在したのかもまとめましょう。タッチポイントとは、SNSや広告、店舗や家族との会話など、ユーザーと企業を結ぶ接点のことを言います。タッチポイントが変わるタイミングでは、ユーザーの思考や行動に変化が生まれるため、これを明確にすることで課題の発見に繋がります。
インタビューで引き出した感情や思考、不満などを、それぞれのフェーズごとにまとめます。行動を起こしたり、踏みとどまったり、変えたりした際の背後にはどのような感情があったのかを書き出しましょう。その際、想像ベースではなく、インタビューで得た事実ベースで書くことを常に意識しましょう。
感情を言語化する際には、モチベーショングラフをベースに考えるとより分かりやすいカスタマージャーニーマップになります。ユーザーの一連の感情の変化を、曲線と表情で表すことで、視覚的に感情の変化を捉えることができます。その上で、より具体的な感情を言語化すると良いでしょう。
それぞれの段階において、ユーザーが直面した課題を洗い出しましょう。顧客にニーズが満たされなかったのはどの部分なのか、マップ全体を見ながら分析します。課題は1つとは限らないので、様々な角度から検討するようにしましょう。モチベーショングラフを見て、負の感情が高まっているポイントに注目すると、課題を発見しやすいです。
オンラインホワイトボード等のサービスを提供しているMiroがカスタマージャーニーマップのテンプレートHPにて配布しているので参考にしてください。
Miro: Customer Journey Map Template
※テンプレート利用の際には、Miroへのsign upが必要となります。
カスタマージャーニーマップは目的ではなく、マーケティングの上での手段です。マップを埋めることを目的とするのではなく、何のためにマップを作るのか、誰についてのマップなのか、どのように利用するのかなど、明確なビジネスゴールを持つことが大切です。課題にフォーカスした上でインタビューを実施し、適当な知見の得られるマップづくりを心がけましょう。
カスタマージャーニーマップに仮説ではなく、事実だけを書くようにしましょう。そのためには、データを集めるための定性調査が有効です。カスタマージャーニーマップというのは、顧客体験をストーリー化することが重要なので、定量調査だけでは組み立てが難しい場合があります。インタビューを行い、ユーザーの話を直接聞くことにより、ユーザーのリアルを反映したマップを作るようにしましょう。