新製品の開発やサービスの改善をする際にはアンケートやインタビューを通じた受容性調査が必要です。今回は具体的な受容性調査の概要と方法についてお教えします。
受容性調査とは、製品のコンセプトや価格などを消費者に検証する調査手法のことです。コンセプト受容性調査であれば「新商品を開発したいが数多くあるコンセプトの中で、どのコンセプトが受け入れらるか」といったリサーチテーマが代表的なもので、価格受容調査では「新商品を作りたいが、どの程度の金額までなら消費者は購買してくれるのか」といったものが挙げられます。受容性調査の反応によって事前に市場での成功可否を占うことができ、多額の損失を防ぐことができる上に、自身のアイデアの有効性をデータを持って裏付けることができます。本稿ではコンセプト・価格受容性のみを紹介しますが、他にもネーミング受容性調査や広告の受容性調査といった調査も存在します。
本記事では女性向けコーヒーを販売する場合を実例とし、調査の実施方法をご紹介したいと思います。
そもそもコンセプト受容性調査がどの様な目的で実施されるのか確認しましょう。コンセプト設計では多様なアイデアの中から、最も消費者に魅力的、つまり斬新で買いたくなる様なアイデアを見つけ出すことが目的となります。
まずは消費者に判断してもらうためのコンセプトリストを作成しましょう。コンセプトリストを作成する場合には表現面については、イメージ画像を入れ、文章の説明を簡潔に収めることに留意して作成しましょう。また内容面では(楽天リサーチの記事では)インサイト・ベネフィット・RTBを入れる様に勧められていますが、インサイトは記載しない場合もあります。ベネフィットはインサイトを解決する手段であり、競合との違いが明らかになる点です。有名な例としては、ドリルの例がありドリルを購入する人が必要としているものはドリル機器ではなく、それによって空けられた穴であるといったものです。穴を空けたいという消費者の需要をドリルという手段によって解決している、ということになります。
RTBとはReason to believeの略語で、ベネフィットを裏付ける根拠であり、消費者の信頼を得るための要素です。例えば「新成分XXを配合」「100年の伝統を持つ老舗が開発」といったものが挙げられます。
インサイトは消費者が気づいていない購買の原因となるニーズです。ですから、コンセプトを提示する場合には商品を通じてインサイトに自発的に気付いてもらう方が理想的なコンセプトテストとなる、という可能性が指摘されています。
評価軸は以下の要素を参考に聴取したい軸の設定をしましょう。選択肢としては回答者の負担も考慮して5段階で聴取すると良いでしょう。
新商品の開発で特に重視するべき項目です。この新奇性が低い場合にはコンセプトとしてのインパクトの強さが足りず上市しても成功しない可能性があります。
興味関心は新奇性とは異なります。仮に新奇性が高くても関心が低い場合には奇抜なだけで需要が低く、インサイトを突けていない場合やそのインサイトのインパクトが薄い場合があります。例えば「しょっぱいコーヒー」といった製品は確かに新奇性は高いですが、興味関心は低く販売しても成功しないことが推察されます。
このスコアと理解度が低い場合にはコンセプトの精緻化が必要となります。非現実的な説明であったり、RTBの内容に納得できていない可能性があります。例えば「絶対に痩せる」といった説明があるコーヒーは信頼ができないことから信頼性が低くことがなることが推察されます。
このスコアと信頼度が低い場合にはコンセプトの精緻化が必要となります。消費者にはわからない専門用語を使いすぎて彼らの混乱を招きますので配慮が必要となります。
購買意欲は新奇性と負の相関にあります。まずは価格を提示せず個人的な感覚で購買したいかを聴取しましょう。
価格は購買意欲や魅力に大きく影響を与えてしまいますので、この質問の順番は最後にしましょう。また、実際の価格提示が困難な場合には「手軽に」などと記載すると良いでしょう。
実際にこの商品を利用したいと思うシーンや、全体としてのコメントを回収し今後の改善に活かしましょう。思わぬターゲット層に有効であることがわかったり新鮮なアイデアの源泉となるでしょう。
マトリクス図を用いてコンセプト案を分類します。例えば、購入意欲と新奇性を二軸として分類した場合、購入意図が高く新奇性が高い場合にはそのコンセプト群の中では市場での成功が見込まれます。既存の商品も同様の手法でアンケート調査を実施しておくとより多くのデータから相対的な新商品のコンセプトとしての評価を得ることができるでしょう。また、市場全体での優位性を把握する場合にはノルム値といった指標を参考にアイデアの質を確認しましょう。
ノルム値とは、同じアンケートを複数の製品に繰り返し実施することで蓄積されたデータを元に算出された値のことです。アンケートを元に算出された値がこのノルム値超えたかどうかで市場での可否を判別します。
そもそも価格受容性調査をどの様な目的で行なっているのか確認しましょう。価格受容性調査の目的は消費者に受け入れられる価格を算出することになります。
価格受容性調査ではPSM分析という分析がメジャーな手法です。PSM分析を通じて購入する下限価格・上限価格・最適価格・妥協価格を算出することができます。
下限価格とは「これ以上安いと信頼できない」といった基準となる指標、上限価格は「これ以上高いと買えない(一方で利益が最高となる)」基準となる指標、最適価格は「消費者にとって最も拒否感のない」指標、妥協価格は高いと安いに評価が分かれる「これくらいなら買っても良いが価格に満足はしていない」指標となります。最低価格から最高価格までが価格受容帯(RAP=Range of Acceptable Price)となり、この範囲が価格設定をするべき指標となります。
ではどのように質問票を作成するべきでしょうか。PSM分析を行う際の質問は以下の4問があれば十分となります。
今回は女性向けのコーヒー飲料の新商品としてデモとしてアンケートをとり、分析を行います。エクセルなど表ツールを用いてx軸を価格・y軸を回答割合に設定したグラフを作成し、そのグラフを用いて分析を行い価格帯(RAP)を算出します。RAPは最低価格から最高価格までの範囲を指し、本稿では155円から173円までは適切な価格帯であることがわかりますが、ここで最低価格は信頼できないほど安いと感じる価格と高いと感じる価格の交点、最高価格は安いと感じ始める価格と高すぎると感じる価格の交点としてそれぞれ算出することができます。また妥協価格は安いと思い始める価格と高いと思い始める価格の交点として算出でき、理想価格は高過ぎると思う価格と信頼できないほど安い価格の交点として算出することができます。