アンケートで回答者の好みを調査する際に生じるのは、「どの設問を使うべきなのか」という問題です。単一選択や複数選択、順位回答など、様々な種類の設問がありますが、これらはどのように使い分ければいいのでしょうか。今回は、好みや評価を聞く場合の設問の分類を整理した上で、その選び方を明らかにします。それぞれの用途を明確に把握することで、アンケートをより精度の高いものとすることができます。
単一選択は、選択肢の中から一つだけ選んで回答する方法です。回答は一つに絞られるため、集計や分析の作業が行いやすいという点で優れています。一方で、回答者にとって該当する選択肢が複数ある場合、一つしか選択できないと回答者に心理的負担を与えたり正確なデータが得られなかったりすることもあります。
【例】以下のうち、特に美味しかったサンプル食品を1つ選んでください。
・商品A
・商品B
・商品C
複数選択とは、選択肢の中からあてはまるものをすべて選ぶ方法です。集計がまとめやすく、回答者も回答しやすいという利点があります。一方で、無制限の複数回答では回答者によって偏りが生じてしまう恐れがあるため、それを防ぐためには「3つまで選択」のように制限付き複数選択にするのが有効です。
【例】以下のうち美味しかったサンプル食品をすべて選んでください。
・商品A
・商品B
・商品C
単一回答マトリクスとは、設問項目に対して、同じ選択肢を一度にまとめて表形式で聞くことができる方法のことです。回答者の評価対象が多くなりすぎると負担になってしまうため、マトリクスを多用するのは避けたほうが良いでしょう。
【例】以下のそれぞれのサンプル食品の評価について当てはまるものを1つ選んでください。
とても美味しい 美味しい 美味しくない 全く美味しくない
商品A ○ ○ ○ ○
商品B ○ ○ ○ ○
商品C ○ ○ ○ ○
順位回答は、完全順位づけとは、選択肢すべてに順位を付ける方法です。完全順位づけは、回答された選択肢の中での優先順位がわかるという点で優れています。一方、回答者の評価対象が増えてしまうため、負担が大きくなってしまいます。
【例】以下のサンプル食品に、美味しかった順に順位をつけてください。
・商品A
・商品B
・商品C
一部順位づけとは、1~3位など、選択肢の中の一部に順位を付ける方法です。選択肢が増えてしまう場合は、一部順位づけを選ぶことで負担を軽減することができます。
【例】以下のサンプル食品に、美味しかった順に3位まで順位をつけてください。
・商品A
・商品B
・商品C
・商品D
・商品E
一対比較法とは、一対ずつの選択肢を示して比較させる方法です。この方法では、回答者は2つの選択肢からどちらが好ましいかを比較し選択することを繰り返します。そのため、一回ごとの評価の負担が軽く、評価の矛盾が生じずらいという利点があります。一方で、比較したい対象が多い場合、一対比較法では設問数がかなり多くなってしまうという欠点もあります。
【例】以下の2つのサンプル食品のうち、美味しかった方を選択してください。
①商品A vs 商品B
②商品A vs 商品C
③商品B vs 商品C
回答者全体に重視されている選択肢を知りたいときは、複数選択か、単一回答マトリクスを利用しましよう。この場合、順位回答は不適切となります。順位回答では、回答者が特定の選択肢をほかの選択肢よりも好んでいるという事実はわかるものの、順位間の差がどの程度であるのかはわかりません。そのため、回答者の好みの全体平均を知りたいときには、アンケートの分析が困難になってしまうからです。
個人単位での順位を知りたいときは、順位回答が適切です。複数選択だと、回答者が重視する選択肢はわかるものの、その中でどれが最も重視されているのかはわからないためです。
順位間の差異を知りたいときは、一対比較法がおすすめです。一対比較法では総当たりの比較となるため、差異を詳細に分析できるからです。先ほども記したように、単なる順位回答では、順位間の差がどの程度かはわからないため、この場合は不適切です。
アンケートで好みや評価を聞く際には、調査の目的に合わせて適切な設問の種類を選択するようにしましょう。単に、全体としての好みを知りたいだけであれば、単一選択か複数選択を使い、各選択肢に対する回答率を分析するので事足ります。個人のなかでの選択肢の順位を知りたいのであれば、順位回答を利用しましょう。全体での順位づけを知りたい場合のように、より詳細な分析が必要な場合には、一対比較法が適切です。
回答者の負担を軽減するよう努めることも重要です。質問文を簡潔にしたり、選択肢を絞ったり、制限付き複数回答や、一部順位付けを適宜利用したりすることによって、回答者が離脱しにくいアンケート作りを心がけましょう。