紙を使った調査と異なり、柔軟で安価に調査ができるインターネット調査。しかしランダムに抽出する方法とは異なり、どうしても回答者に特徴が出てしまいます。また回答者を集めるパネルサイトによっても特徴はかなり異なります。では、実際にどのような特徴があるのか資料と経験豊富なリサーチャーの意見をもとに見ていきましょう。
本田・本川(2005)はインターネット調査と郵送調査や訪問留置調査といった従来の調査手法のユーザーの傾向の違いについて分析しています。インターネットでの回答者は一般のランダムに抽出したアンケートと比較して学歴が高く・非正規従業員が多く・技能労務職(公務員)が少ないといった傾向があると指摘されています。二瓶(2015)も大卒比率が高く、高校・中卒比率は低いことを明らかにしています。職業については管理職がインターネットの場合に突出して高いことがわかっています。一方で生産工程従事者や輸送・建設業・運搬業と言った職種では就業構造基本調査の方が大きく有意にでる結果となりました。年収についてもインターネット調査の方が高くなっており、アパートマンションでの生活者が多いといったことも挙げられています。また登録者数ではインターネット利用率に起因して都市部が多く、地方部では少ないと考えられています。
ネットモニターと非ネットモニターでは消費傾向も異なります。野村総研ITソリューションフロンティアによる2013年の調査ではネットモニターは非ネットモニターと比較して倍近い割合でプライベートブランドを購入し、1.5倍ほどの割合で実際に店舗で実物を確かめる傾向にあるなど、堅実な消費性向を示しています。またネットサービスにも使い慣れていたり、ポイントカードを好むことも明らかになっています。
スマホを利用した調査環境について資料や先行研究を元に考察して行きましょう。二瓶(2015) は結論として「( 従来のインターネット調査と比較して)スマホの回答者を多く含む抽出フレームの方が、公的統計(就業構造基本調査)に近い属性を持つことが示された。これらの結果から,スマホユーザーを活用することにより,「インターネット調査を世論調査に活用できる可能性が示唆される」としています。つまりスマホでのアンケート調査はインターネット調査とランダム抽出調査の中間に位置する、と言えるでしょう。就業構造基本調査は、総務省が二段階抽出法で無作為に抽出した52万世帯108万人を対象にした調査で、今回の記事では統計上正確なデータとしてインターネットユーザーやスマホユーザーとの比較材料として利用します。
共通ポイントサイトやアンケート回答サイト、通信キャリアが展開するサイトに配信し回答者を募集しています。しかしパネルサイトによってはサイト運営者が関連サービスを展開している場合があり、そうした場合には関連サービスが強く結果として反映されることになります。詳細な結果をみる場合にはどのパネルからの結果なのか注意して分析するべきです。
こうした偏りを排除するには回答する属性の回収数を限定する「割付」をおこなうことが一般的です。調査を実施し、事前に決めた回答数に達した段階で調査回答を締め切ることで無駄な偏りを防ぎます。その後ウエイトをつけて本来あるべき構成比に戻すことで理想のデータを収集することができます。