新しい商品を作りたいときや、既存のサービスに新しい機能を加えたいときには、ユーザーの話を聞くことによって洞察を得られ、そのプロダクトをさらに伸ばすことができます。ユーザーインタビューの目的は、顧客との対話を通じて、課題やニーズを把握することにあります。しかし、インタビューのやり方に間違いがあると、本当のニーズを捉えられず、貴重なユーザーの意見を無駄にしてしまいます。そこで今回は、ユーザーインタビューの際におさえておきたいtipsを紹介いたします。
まず、インタビューの設計段階での留意点を確認します。設計段階で周到に準備することが、インタビュー成功の鍵となります。
インタビューにおいて、誰に話を聞くのかは非常に重要です。自分のプロダクトにお金を使うであろうターゲットのセグメントを特定した上で、特性・属性(性別、年代、職業など)に分けて幅広くインタビューしましょう。1種類の人に聞くのではなく、自身のプロダクトに貢献してくれそうな、様々な人に話を聞く必要があります。自分の近くにいる人だけに話を聞いても、良質な情報を得ることはできません。できるだけ異質の人たちに話を聞くことで、より多くの情報を得ることができます。
特にプロダクトテストの場合には、アーリーアダプター(流行に敏感で、新しいサービスを早期に受け入れる人たち)に集中すると良いでしょう。アーリーアダプターに、プロダクトから得られた価値や、利用にあたってのボトルネックを聞くことにより、潜在的なニーズを探ることができます。
とりあえず20人に2時間話を聞いてみよう、といったインタビュー設計は適切ではありません。膨大な数のユーザーに対して長時間インタビューしても、得られる情報は似通ったものになってしまいます。6~8人に対して1時間話を聞けば、ある程度の課題抽出が可能です。十分に情報を得られなかった場合は、必要に応じて再設定するのが良いでしょう。
つづいて、インタビューの最中に心に留めておくべき基本姿勢をチェックしましょう。
「はい」「いいえ」だけで答えられるクローズドクエスチョンだと、対話が展開していきません。「~についてどう思いますか?」のように、回答を制限しないオープンクエスチョンを使用しましょう。ただし、話題を絞りたいときや、話題を変えたいときには、クローズドクエスチョンが有効です。クローズドクエスチョンで話題を特定したうえで、オープンクエスチョンによって話を広げましょう。
ユーザーインタビューでは、自分が話をしたいという気持ちは抑えて、聞き役に回りましょう。相槌を打ったり、確認をする程度にとどめ、くれぐれも自分の仮説を話し過ぎることがないようにしましょう。短い時間で相手にたくさん話をしてもらい、できるだけ多くの情報を聞き出すことが重要です。
質問項目はあらかじめ用意しておくのが望ましいとはいえ、それらを消化することが目的にならないよう注意する必要があります。重要なのは、相手との対話に集中し、価値ある情報を引き出すことです。用意した順番どおりに質問するのではなく、文脈に沿って質問するようにしましょう。
課題やニーズを理解するためには、ユーザーのコンテクストを理解する必要があります。そのために、ユーザーの発言の裏にはどのような根拠があるのかを深堀しましょう。相手が「~に悩んでいます」と言ったときには、その発言を鵜呑みにするのではなく、その悩みを解決するためにどのような行動をとったのか、どのような想いから悩んでいるのかを聞くことで、根拠や矛盾を発見できます。ただし、ユーザーの発言に矛盾があったとしても、発言を否定してはいけません。相手が気持ちよく喋れるように心がけましょう。
新しく考案した商品やサービスを冒頭で見せてしまうと、相手の頭に余計なことを植え付けてしまいます。相手がどのようなことを考えているのかを探りたいのに、先入観を与えてしまっては、本当のニーズを捉えることはできません。プロダクトが解決しうる課題を掘り下げた上で、一番最後にプロダクトを提示し、プロダクトがその課題を解決できそうか聞くようにしましょう。
ユーザーの発言のうちどれが重要な情報になるのかは、後になってみないと分かりません。できるだけ生の発言に近い形でメモをとり、余計な推測を入れないようにメモをとりましょう。事前に相手の許可をとった上で、インタビューを録音するのも有効です。
最後に、実際の質問内容に関するtipsをまとめます。インタビューの際は、ユーザーの生活や課題を捉えるよう質問することを心がけましょう。
最初はアイスブレイクとして、基礎的な情報や直近の出来事、普段の生活など、答えやすい質問からはじめるのが良いでしょう。雑談に近い形で始めることで相手の緊張もほぐれ、次の質問に繋げやすくなります。
「この機能をどう思いますか?」「どのような機能がほしいですか?」といった質問はあまり適切とは言えません、なぜなら、ユーザーは実際に自分がどんなものを求めているのか知らないためです。自動車会社フォード・モーターの創設者ヘンリー・フォードの有名な言葉で、「何が欲しいかと尋ねれば、人は皆『もっと速い馬』がほしいと答えるだろう」というものがあります。馬しか知らないユーザーは、「車を作ってくれ」とは言いません。新しいアイデアや機能ではなく、ユーザーの課題や、それが生活においてどの程度重要なのかにフォーカスすることで、潜在的なニーズを発見することができます。
プロダクトテストの際には、利用意向や課金性向を聞きすぎないようにしましょう。先にプロダクトを提示して「どう思いますか?使いたいですか?」と質問すると、たいていのひとは「いいと思う、使いたい」と答えるためです。まずは課題にフォーカスして深く聞いた後に、そのプロダクトが課題を解決できそうかどうかを聞くようにしましょう。
ユーザーの「使いたい!」という意見を鵜呑みにしてはいけません。意見を聞いて納得するのではなく、「興味がありましたら、こちらにご登録ください」など、実際の行動を促しましょう。もし実際に行動しなければ、仮に「いいと思う」と意見を述べていたとしても、ニーズはなかったのだと判断できます。
「仮に~が起こったとして…」のように、仮説を話してはいけません。「前回~が起こったとき、どのように行動しましたか?」のように、具体的な出来事について話をしましょう。将来的な憶測を尋ねても、それは単なる意見であり、仮説にすぎません。仮定の話ではなく、ユーザーの実際の生活について幅広い質問を行い、ユーザーがどのように課題に遭遇したのか、その理由を探ることで、説得力のある有力な情報を入手できます。
ユーザーと対話することで、自分のプロダクトのニーズはどこにあるのかを把握できます。ニーズを見つけるうえで有効な質問をいくつか紹介します。
手間をかけて解決を試みていたり、自作で組み合わせたソリューションがある場合には、機会が多いと言えるでしょう。
既存の解決策の課題を聞くことで、ユーザーにどのようなニーズがあるのかを把握できます。
その問題を解決するためにどの程度のお金や時間を費やしてきたのか、現在費やしているのか、具体的な金額で把握することにより、ユーザーがプロダクトにより得られる価値や、どの程度問題を重要視しているのかがわかります。
ユーザーがその問題よる負担を定期的に感じていれば、それだけ潜在的な解決策をうけいれやすいでしょう。
問題を抱えていているユーザーが実際に選択肢を与えた際に対応できる予算や権限があるかを見極めることができます。
ユーザーインタビューの際には、ユーザーの経験や生活、課題にフォーカスすることで、商品やサービスの裏のニーズを見つけることができます。上記のtipsを意識して、良いインタビューにできるように心がけましょう。