アンケートにおける質問の段階数の選び方

作成日:
2021-01-25
更新日:
2021-01-25

顧客の商品に対する満足度や、意見への同意度を判定するときには、「評定尺度法」がよく使われます。 評定尺度とは、あらかじめ設定された評価段階の中から、自分に当てはまるものを選択してもらう方法です。 「よい,ややよい,普通,やや悪い,悪い」のような5段階評価が一般的ですが、段階数はアンケート結果にも影響を及ぼすため、状況に合わせて使い分ける必要があります。 そこで今回は、先行研究をもとに、どのような場合に、どのような段階数が適切なのかを検討していきます。

段階数は多いほうがいいのか?少ないほうがいいのか?

はじめに、段階数をどのように設定すべきであるのかを検討します。一般的には、3~5段階評価がよく使われていますが、果たしてそれは適当なのでしょうか。

段階数を設定する際に考慮しなければならないのは、

データの正確性

回答者の負担

の2点です。

選択肢が多いほど、データのばらつきが大きくなるために、より精巧な結果を得ることができます。Rosenston(1986)の研究では、3段階評価より5段階評価のほうが予測的妥当性が高いという結果も示されています。特に、同一個人における変動を捉えたい場合は、7~9段階くらいに増やしたほうがうまくデータをとることができます(Bendig& Hughes,1953)。

一方で、選択肢が多すぎると、負担が大きくなるため、回答者が途中離脱したり、適当に回答したりしだしてしまう恐れがあります。選択肢が7を超えると、回答者がランダムに選択しだしてしまうという研究結果もあります。選択肢が少なければ、比較的多数の項目でも実施することができたり、低年齢者でも利用しやすいといったメリットがあります。

項目が多いときや、対象者が小学生のときなどには、2段階評価や3段階評価を使うのが良いでしょう。一方、精巧なデータが必要な調査では、5~7段階評価がおすすめです。重要な質問項目のみ選択肢を増やし、それ以外の項目は2択にとどめるといった使い分けも有効と言えます。

「どちらでもない」は必要か?

次に、「どちらでもない」という選択肢はどのようなときに必要なのかを検討します。「普通」「どちらともいえない」のように、ニュートラルな選択肢のこと、中立的尺度と言います。3段階や5段階のように、段階数が奇数の場合は、真ん中に中立的尺度を置くことができます。2段階や4段階のような偶数の場合は、中立的尺度は入れられずどちらかの立場を選択させることになります。この、「どちらでもない」という選択肢を入れる必要があるのはどのような場合なのか、「どちらでもない」を入れるメリットとデメリットから検討していきます。

メリット

  • 回答者の心理的な負担を軽減

中立的尺度がない場合、回答者は自分の立場を明確にしなければならず、心理的負担を感じてアンケートをやめてしまう場合もあります。中立的な立場の人にどちらかの立場を選択させることは「強制回答」となり、望ましいものではありません。中立的尺度を設定することで、回答者に逃げ道を与え、負担を軽減することができます。

  • 分析の幅が広がる

中立的尺度を入れると、分析手法が広がります。なぜなら、「どちらでもない」を入れることにより、尺度が等間隔になるからです。尺度が等間隔でないと、分析する際に点数化できないために、重回帰分析などのより高度な分析手法は使用できません。例えば、「良い,やや良い,やや悪い,悪い」という4段階評価の場合、「良い,やや良い」の間隔より、「やや良い,やや悪い」の間隔のほうが大きいため、選択肢の間隔は等間隔とは言えません。「良い,やや良い,普通,やや悪い,悪い」のように、中立的尺度を入れることで、間隔を等しくし、数値化を可能にします。

デメリット

  • 分析しづらい

中立的尺度をいれると、その選択肢に回答が集中しやすくなります。特に日本では、アメリカのような個人主義国家と比べて極端な結果を避ける傾向にあるため、曖昧な結果になってしまいます。「どちらでもない」という回答が増えてしまうと、数値の推移を観察しづらいのに加え、他の要素との因果関係や相関を分析しづらくなってしまいます。 

  • 「どちらでもない」の多義性

「どちらでもない」を一様に解釈できないのも、分析のしづらさの原因になります。「どちらでもない」を選ぶ人の中には、設問内容に対して中立的である場合のほかに、よくわからないから、どうでもいいから選んだという人も存在するでしょう。中立的尺度は、回答者の意図がさまざまであるため、回答結果に歪みをもたらしてしまう可能性もあります。

このように、中立的尺度にはメリットのデメリットの双方が存在するため、正解はありません。結果の解釈のしやすさを重視するのであれば、「どちらでもない」は入れないほうが望ましいですし、回答者の回答しやすさを重視するのであれば、入れるのが望ましいでしょう。調査の目的や対象に合わせて選択する必要があります。

NPSはなぜ11段階?

最後に、近年欧米を中心に流行している「NPS」では、なぜ11段階評価なのかを考えてみます。

NPSとは、”Net Promoter Score”の略で、顧客ロイヤルティを測るための指標の一つです。この指標は、2003年にフレドリック・ライクヘルド氏が発表し、AppleやGoogleといった大手企業が採用したことで、急速に広がりました。全米上位500企業のうち、30%以上がこの指標を採用しています。

NPSでは、「この製品を親しい友人や家族にどの程度勧めたいと思いますか?」という質問に対して、0~10の11段階で評価してもらいます。9~10を選択した人を推奨者(prpmoter)、7~8を選択した人を中立者(passive)、0~6を選択した人を批判者(detractor)として3つに分類します。

このNPSについて生じる疑問は、11段階である正当性はどこにあるのか、というものです。この疑問については、明確な正当性は存在しないというのが答えになるでしょう。実際、NPSの考案者であるライクヘルド氏自身も、「11段階以外でも多分大丈夫だ」と、11段階に必然性はない旨を発言します。彼自身は、11段階に設定した理由について、「0という尺度を用いたほうが、混乱が生じづらいだろう」と述べています。1~10だと、1と10のどちらが「推奨」にあたるのか分かりづらいが、0と10であれば、0を「推奨」だと考える回答者はいないだろうから、間違いは生じないだろう、ということのようです。

NPSは非常にシンプルな指標で、会社のパフォーマンスを簡単に測定できます。また統一指標であるため、競合他社との比較や業界内での自身の立ち位置の把握を行うことができます。一方で、11段階という曖昧なスケールは、データの歪みを生じさせる可能性もあります。特に日本人は、中間カテゴリに集中する傾向にあるため、NPSにおいては5や6といった中央付近の点数に集中すると考えられます。しかしNPSにおいては5や6といった数値は「批判者」に分類されるため、日本のNPSは批判的評価に振れやすくなっています。

結論

質問項目の段階数は、研究者の間でも意見が割れている問題であり、絶対的な正解はありません。そのため、段落数を決める際には、それぞれの調査に合わせて検討しなければなりません。

・データの正確性

・回答者の負担 

・質問項目数

・回答者の属性

・使用したい分析手法

などの項目を考慮したうえで、段落数や中立的尺度の有無を決める必要があります。ただし、2~3段階評価であるとデータの正確性に欠ける部分があり、7段階以上になると、回答者がランダムに選択し出す可能性があることを踏まえ、迷った際には4~5段階評価を選択するのがよいでしょう。

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