価格受容性調査とは? PSM分析とCVM分析を理解して価格戦略策定につなげる方法

価格受容性調査 (プライシング調査)とは

価格受容性調査とは、製品の価格を決めるうえでプロダクトアウト(商品先行)ではなくマーケットイン(顧客先行)の視点から、どの程度の価格なら顧客に受け入れてもらえるかを算出する定量分析の一種です。新商品の価格を決定したり、既存商品の価格を変更することは一見すると非常に難しいように思えます。原材料費や輸送費などのコストを差し引いて利益が出る状態にしなければならない一方で、その価格が消費者に好意的に受け入れてもらう必要もあります。価格受容性調査では、消費者がいくらなら買ってもらえるかというシミュレーションをすることで、顧客理解を重点とした価格の意思決定をサポートすることができます。価格受容性調査にはPSM分析とCVM分析の二つの手法があり、それぞれ商品価格の適正価格を算出するため、各価格帯ごとの購入率を算出するために用いられます。

PSM分析とは

PSM分析とは

PSM(Price Sensitivity Meter, PSM)分析とは、商品・サービスの適正価格帯を算出する定量分析の手法です。対象者に「安すぎる」、「安い」、「高い」、「高すぎる」と感じる価格を数値でそれぞれ答えてもらうことで、ターゲットが受け入れられる価格を算出します。アンケートなどでデータをとる場合、同時に回答者の属性を尋ねることで、例えば性・年代別に受容価格がどれくらい違うかを可視化することも可能です。

PSM分析の分析方法と結果例

アンケートの中で該当商品に関する以下のような4つの質問を尋ねます。

  1. 安すぎて品質に不安を感じ始める価格はいくらですか(非受容最低価格)
  2. 安くてお得だと思う価格はいくらですか(受容最低価格)
  3. 高いが品質が良いので購入する価値があると感じる価格はいくらですか(受容最高価格)
  4. 高すぎて品質の良さに関係なく購入検討できないと感じる価格はいくらですか(非受容最高価格)

※サンプル数は300-500サンプル程度が目安とされています。アンケートの設計上、アンケート参加者の回答がすべて有効サンプルとなるため、比較的サンプル数が少なくて済むものとなっています。

これらの質問に対する回答について、(1)と(2)に関しては値の大きいほうから、(3)と(4)に関しては値の小さなほうから順に価格帯別の累積パーセンテージをとります。そうして算出された4つの値をグラフにしたものが下記の図になります。

このグラフにおけるそれぞれの交点が価格を設定するうえで基準とすべき値となります

  • 下限価格:これより低く価格を設定すると、顧客が安すぎて品質に疑問を持つようになってしまい購入しなくなる価格の限界点を示しています。下限価格は量販店やスーパーなどのセール・特売の値段として採用されることがあります。
  • 妥協価格:「この商品であればこれくらいの値段だろう」という顧客の心理的な状態を表す価格を示しています。
  • 上限価格:これより高く価格を設定すると、顧客が高すぎて品質が良かろうとも価値を感じずに購入しなくなる価格の限界点を示しています。高級品や付加価値の高い商品(初回限定盤など)において採用されることがあります。
  • 理想価格:「安すぎる」と「高すぎる」という購買に否定的な意見を持つ人が最も少なくなる価格であり、最も多くの人が買う可能性が高い価格です。

CVM分析とは

CVM分析とは

CVM(Contingent Valuation Method, CVM)分析とは、商品・サービスがそれぞれの価格帯でどの程度の購入率が見込めるかを算出する定量分析の手法です。もともとは環境保全活動の経済価値を図るために用いられていました。こちらもPSM分析と同じように、アンケートの中で性・年代といった属性を聴取しておくことで各セグメントごとの分析結果を算出することができます。

CVM分析の分析方法と結果例

アンケートの中で、事前に該当商品の価格帯を複数用意し、回答者にはどれか一つのアンケート画面をランダム表示して回答を得ます。例えば以下のような質問文で尋ねます。

  • この商品が3,000円だったとしたら、購入したいと思いますか?
  • 「はい」と回答 →では3,500円では購入したいと思いますか?
  • 「いいえ」と回答 →では2,500円では購入したいと思いますか?
  • この商品が3,500円だったとしたら購入したいと思いますか?
  • 「はい」と回答 →では4,000円では購入したいと思いますか?
  • 「いいえ」と回答 →では3,000円では購入したいと思いますか?

※サンプル数はランダム表示させる質問項目の数×100サンプル程度が目安となっています。例えば5つの価格幅をランダムに提示して回答を得る場合、500サンプルを回収すれば有効な分析結果を得ることができます。

得た結果に対し、それぞれの価格帯でどれくらいの購入意向率があったかを計算することでCVM分析の結果を出力することができます。

例えばこの例では子持ち世帯と単身世帯それぞれにおいてある商品に対するCVM分析の結果を表しています。グラフを見ると、赤い色でハイライトされている単身世帯の方が青色では以来とされている子持ち世帯よりも全体的に購入意欲が高い傾向にあることがわかります。また、それぞれの価格帯で具体的に何パーセントの購入意向があるのかを視認することができ、例えば6,000円での単身世帯購入率はおよそ85%程度となっていることがわかります。

価格戦略を策定するうえで価格受容性調査を活用するには

なぜ価格戦略が重要なのか

価格戦略とは、その名の通り商品やサービスの価格を戦略的に設定することを指します。経済学の理論では、価格は需要と供給によって決まり、価格を上げれば上げるほど受容が下がるというトレードオフの関係にあります。事業者の立場では価格を上昇させることで収益率を改善させるモチベーションがありますが、価格を上昇させすぎると売上は低下してしまうため、利益を最大化するためにも最適な価格の設定は企業の重要な戦略となっています。

そういった最適な価格を決定することは受容と供給のバランスを考えつつ慎重に決定する必要があるため、企業の意思決定の中でも難易度が高いものとなっています。一方で、やり方を工夫して最適な価格を設定することができれば、企業のキャッシュフローに与える影響は極めて大きな効果を与えます。

戦略コンサルティング会社マッキンゼーのある食品メーカーの分析によれば、固定費・間接費、変動費をそれぞれ1%改善すると、営業利益はそれぞれ1.3%、3.5%改善します。また、販売数量を1%増加させると営業利益は3.6%改善します。一方で、価格を1%あげることができれば営業利益は7.1%アップするという結果がでました。

価格をいじることができれば企業のボトムラインへのインパクトは非常に大きくなるため、現場の直感やコスト重視の価格設定は見直す余地が十分にあるといえます。

価格戦略の例

価格戦略を策定するうえで基本となる考え方は、支払い意欲が高い人にはなるべく多く払ってもらうということです。ある商品・サービスに対して払ってもよいと思っている価格は個人個人で違っていることが多く、Aさんは3,000円払ってもよいがBさんは2,000円までしか払いたくないという状況は実はどこでも起こりうるものです。そのため、企業としては支払い意欲の高い人に対して高い価格を設定したり、支払い意欲の低い人にも買ってもらうための割引などを設けるなどして価格差別を行っています。

価格差別の例としては次のようなものがあげられます。

  1. セグメンテーション・プライシング:企業が観察可能な顧客の属性によって支払い準備に差がある場合、顧客のセグメンテーションごとに異なる料金を課すことが可能です。価格を重要視するAというセグメントと、価格以外の性能や品質を重視するBというセグメントに対し、それぞれ違う料金設定を行うのがこのプライシングです。具体的な例では鉄道会社が学生と社会人で別々の料金を課していることがあげられます。
  2. 二部料金制・バンドリング:企業が顧客の属性を観察できず、顧客の支払い準備がわからない場合、あらかじめ複数のメニューを用意しておくことによって顧客が自分の支払い準備だけの金額を支払ってもらうプライシングの方法です。
    例えば二部料金制は、支払い準備が十分に高い顧客には一単位当たりの購入単価を下げる代わりに、基本料金という形で固定の金額を支払ってもらいます。このようにすることで収益を上げている企業の例は通信会社(通信プランを選択できる)、電気会社(基本料金がかかる)、コストコ(年会費を支払うが商品は安い)などがあげられます。
    バンドリングとは関連する2つ以上の商品やサービスを一つのセットとして販売するプライシング手法です。例えばMicrosoftのワードに2,000円、エクセルに3,000円の価値を感じているAさんと、ワードに500円、エクセルに4,500円の価値を感じているBさんの二人がいるとします。この場合ワードとエクセルをセットで5,000円で販売するほうがそれぞれを単品で販売するよりも売上を増加させることができます。
  3. 最低価格保証:最低価格保証は販売店の値段が他店よりも高ければ値下げするというプライシングの手法です。一見すると損をするようなプライシングの仕組みですが、顧客はこの最低価格保証を「ここで買えばおそらく一番安い値段だろう」というメッセージとして受け取ります。また、「一番安い価格で買えた」という満足度を上げる要因にもなりえます。さらに、最低価格保証をすることで市場の価格が高いレベルで安定するという傾向もあります。

PSM分析とCVM分析の違いと使い分け

上記のような価格戦略を策定するうえで、PSM分析やCVM分析は非常に有効なツールとなりえます。

PSM分析のメリット・デメリット

PSM分析のメリット

PSM分析のメリットとしては

  • 自由記述で数値を入力してもらうため、顧客視点での価格決定に有効
  • 設問設計がシンプルで設問数を抑えることができる
  • 算出結果がある程度幅があり、顧客がどれくらい価値を感じているかわかりやすい

PSM分析は各交点が受容最低価格、受容最低価格といったものに対応しており、その直感的な意味を理解しやすい分析手法です。このため、例えば上記で説明したバンドリングをする際の参考価格を把握したり、セグメンテーション・プライシングをするのに活用できたりします。

PSM分析のデメリット

一方でデメリットとしては

  • 顧客視点での分析のため、実現不可能、または解釈不能といった結果になる可能性がある
  • ある価格でどのような購入率になるかという細かなシミュレーションはできない

CVM分析のメリット・デメリット

CVM分析のメリット

CVM分析のメリットとしては

  • ある価格で販売する場合の購入率はxx、という風な細かなシミュレーションができる
  • 実現不可能、解釈不能といった結果になることは少ない
  • 一つの平面上に、複数のセグメントのシミュレーション結果を一度に表示できる

CVM分析は各価格帯で購入率がどれくらいかという結果を算出する分析手法で、想定している販売価格だとどれくらいの購入率が見込めるかというシミュレーションを細かく行うことが可能です。また、あらかじめ価格幅を提示して分析を行うため、顧客が価値イメージを想像しにくい商品やサービスであってもある程度正確な分析を行うことができます。

CVM分析のデメリット

一方でデメリットとしては

  • あらかじめ提示する価格帯を決める必要がある
  • 提示する価格帯は調査主体が恣意的に決めるため、純粋な顧客視点での価格調査は行えない
  • PSM分析よりも設問数が多くなり、サンプル数もより多く必要になる

PSM分析・CVM分析の調査方法・調査の流れ

Questでは価格受容性調査を下記のような流れで実施しております。

STEP1 事前打ち合わせ

調査の背景や目的をご共有頂くとともに、調査票を貴社、もしくは弊社にて作成するかを相談させていただきます。また、アンケートの対象者となる方をどのような属性でリクルーティングするかについても議論させていただきます。

STEP2 アンケート配信

Questが提携しているアンケートパネルにスクリーナー用アンケートを配信し、条件に合致する方にはそのまま本調査に進んでいただきます。

STEP3 分析・資料作成

アンケートを回収したRaw dataをそのまま納品することも可能ですが、戦略コンサルティング会社出身の社員が分析を行い、資料化をすることも可能です。

価格受容性調査 (プライシング調査) の実施をご検討であれば、まずはお気軽にご相談ください。
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加藤 直樹 | Naoki Kato
加藤 直樹 | Naoki Kato
東京大学法学部を卒業後、ボストン・コンサルティング・グループ (東京) に入社し、コンサルタントとして活躍。2019年に株式会社 Quest に Join。認知度調査や市場規模調査等のマーケティングリサーチに強み。
近藤 恭平 | Kyohei Kondo
近藤 恭平 | Kyohei Kondo
北海道大学工学部卒業後、エニグモ、リクルートを経て、スタートアップを共同創業。同社退職後は BCGデジタルベンチャーズを経て、株式会社 Quest に Join。事業オーナー目線でのカスタマー・エキスパートリサーチに強み。

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