価格受容性調査とは、製品の価格を決めるうえでプロダクトアウト(商品先行)ではなくマーケットイン(顧客先行)の視点から、どの程度の価格なら顧客に受け入れてもらえるかを算出する定量分析の一種です。新商品の価格を決定したり、既存商品の価格を変更することは一見すると非常に難しいように思えます。原材料費や輸送費などのコストを差し引いて利益が出る状態にしなければならない一方で、その価格が消費者に好意的に受け入れてもらう必要もあります。価格受容性調査では、消費者がいくらなら買ってもらえるかというシミュレーションをすることで、顧客理解を重点とした価格の意思決定をサポートすることができます。価格受容性調査にはPSM分析とCVM分析の二つの手法があり、それぞれ商品価格の適正価格を算出するため、各価格帯ごとの購入率を算出するために用いられます。
PSM(Price Sensitivity Meter, PSM)分析とは、商品・サービスの適正価格帯を算出する定量分析の手法です。対象者に「安すぎる」、「安い」、「高い」、「高すぎる」と感じる価格を数値でそれぞれ答えてもらうことで、ターゲットが受け入れられる価格を算出します。アンケートなどでデータをとる場合、同時に回答者の属性を尋ねることで、例えば性・年代別に受容価格がどれくらい違うかを可視化することも可能です。
アンケートの中で該当商品に関する以下のような4つの質問を尋ねます。
※サンプル数は300-500サンプル程度が目安とされています。アンケートの設計上、アンケート参加者の回答がすべて有効サンプルとなるため、比較的サンプル数が少なくて済むものとなっています。
これらの質問に対する回答について、(1)と(2)に関しては値の大きいほうから、(3)と(4)に関しては値の小さなほうから順に価格帯別の累積パーセンテージをとります。そうして算出された4つの値をグラフにしたものが下記の図になります。
このグラフにおけるそれぞれの交点が価格を設定するうえで基準とすべき値となります
CVM(Contingent Valuation Method, CVM)分析とは、商品・サービスがそれぞれの価格帯でどの程度の購入率が見込めるかを算出する定量分析の手法です。もともとは環境保全活動の経済価値を図るために用いられていました。こちらもPSM分析と同じように、アンケートの中で性・年代といった属性を聴取しておくことで各セグメントごとの分析結果を算出することができます。
アンケートの中で、事前に該当商品の価格帯を複数用意し、回答者にはどれか一つのアンケート画面をランダム表示して回答を得ます。例えば以下のような質問文で尋ねます。
※サンプル数はランダム表示させる質問項目の数×100サンプル程度が目安となっています。例えば5つの価格幅をランダムに提示して回答を得る場合、500サンプルを回収すれば有効な分析結果を得ることができます。
得た結果に対し、それぞれの価格帯でどれくらいの購入意向率があったかを計算することでCVM分析の結果を出力することができます。
例えばこの例では子持ち世帯と単身世帯それぞれにおいてある商品に対するCVM分析の結果を表しています。グラフを見ると、赤い色でハイライトされている単身世帯の方が青色では以来とされている子持ち世帯よりも全体的に購入意欲が高い傾向にあることがわかります。また、それぞれの価格帯で具体的に何パーセントの購入意向があるのかを視認することができ、例えば6,000円での単身世帯購入率はおよそ85%程度となっていることがわかります。
価格戦略とは、その名の通り商品やサービスの価格を戦略的に設定することを指します。経済学の理論では、価格は需要と供給によって決まり、価格を上げれば上げるほど受容が下がるというトレードオフの関係にあります。事業者の立場では価格を上昇させることで収益率を改善させるモチベーションがありますが、価格を上昇させすぎると売上は低下してしまうため、利益を最大化するためにも最適な価格の設定は企業の重要な戦略となっています。
そういった最適な価格を決定することは受容と供給のバランスを考えつつ慎重に決定する必要があるため、企業の意思決定の中でも難易度が高いものとなっています。一方で、やり方を工夫して最適な価格を設定することができれば、企業のキャッシュフローに与える影響は極めて大きな効果を与えます。
戦略コンサルティング会社マッキンゼーのある食品メーカーの分析によれば、固定費・間接費、変動費をそれぞれ1%改善すると、営業利益はそれぞれ1.3%、3.5%改善します。また、販売数量を1%増加させると営業利益は3.6%改善します。一方で、価格を1%あげることができれば営業利益は7.1%アップするという結果がでました。
価格をいじることができれば企業のボトムラインへのインパクトは非常に大きくなるため、現場の直感やコスト重視の価格設定は見直す余地が十分にあるといえます。
価格戦略を策定するうえで基本となる考え方は、支払い意欲が高い人にはなるべく多く払ってもらうということです。ある商品・サービスに対して払ってもよいと思っている価格は個人個人で違っていることが多く、Aさんは3,000円払ってもよいがBさんは2,000円までしか払いたくないという状況は実はどこでも起こりうるものです。そのため、企業としては支払い意欲の高い人に対して高い価格を設定したり、支払い意欲の低い人にも買ってもらうための割引などを設けるなどして価格差別を行っています。
価格差別の例としては次のようなものがあげられます。
上記のような価格戦略を策定するうえで、PSM分析やCVM分析は非常に有効なツールとなりえます。
PSM分析のメリットとしては
PSM分析は各交点が受容最低価格、受容最低価格といったものに対応しており、その直感的な意味を理解しやすい分析手法です。このため、例えば上記で説明したバンドリングをする際の参考価格を把握したり、セグメンテーション・プライシングをするのに活用できたりします。
一方でデメリットとしては
CVM分析のメリットとしては
CVM分析は各価格帯で購入率がどれくらいかという結果を算出する分析手法で、想定している販売価格だとどれくらいの購入率が見込めるかというシミュレーションを細かく行うことが可能です。また、あらかじめ価格幅を提示して分析を行うため、顧客が価値イメージを想像しにくい商品やサービスであってもある程度正確な分析を行うことができます。
一方でデメリットとしては
Questでは価格受容性調査を下記のような流れで実施しております。
調査の背景や目的をご共有頂くとともに、調査票を貴社、もしくは弊社にて作成するかを相談させていただきます。また、アンケートの対象者となる方をどのような属性でリクルーティングするかについても議論させていただきます。
Questが提携しているアンケートパネルにスクリーナー用アンケートを配信し、条件に合致する方にはそのまま本調査に進んでいただきます。
アンケートを回収したRaw dataをそのまま納品することも可能ですが、戦略コンサルティング会社出身の社員が分析を行い、資料化をすることも可能です。