STP分析とは、アメリカの経営学者フィリップ・コトラーが提唱したマーケティングの手法です。S・T・Pとは、分析の際に必要とされる3つの観点「Segmentation・Targeting・Positioning」の頭文字をとったものです。Segmentation(セグメンテーション)とは、市場をある属性・ニーズ等で細分化する過程です。Targeting(ターゲティング)とは、細分化された市場のうち参入するものを選定する過程です。そして、Positioning(ポジショニング)とは、参入する市場における自社と他社の位置関係を把握する過程です。
自社サービスが獲得しているユーザー属性やサービスの強み・課題を把握し、他社との位置関係から、市場に参入する際の取るべき戦略・方向性や成功の可能性を見定めるために用いられます。
自社に適した属性のグループ・市場を認識することで、事業戦略の方向性を決定しやすくなります。
自社がターゲットにするべき市場や他社との関係性・他社と比較した時の優位性を把握することで、効率的な事業展開ができます。
市場での自社の立ち位置を客観的に見ることで参入後の自社の優位性を、データから合理的に判断することができ、不必要な競合を回避することができます。
Segmentation(セグメンテーション)・Targeting(ターゲティング)・Positioning(ポジショニング)について、具体的にそれぞれの分析過程で行うことについて解説します。
Segmentationとは、市場を細分化することを意味しています。細分化の仕方としては、市場に膨大に存在する顧客を同質の属性(ニーズ)を持ったグループごとに分類します。提供するサービスとその顧客層を繋げられるグループ分けが必要となります。例えば、アマゾンは、セグメンテーションの際に通販利用やコンテンツ閲覧を行うネット利用や年収といったものを軸としています。
Segmentationを行う際によく用いられる属性として以下があります。
国、地域、人口、気候、文化、慣習、宗教といった地理的な要素による分類軸のことです。
年齢、性別、職業、学歴、家族構成といった基本情報となるような要素による分類軸のことです。
価値観、性格、趣味、ライフスタイルといった心理的な要素による分類軸のことです。
購買頻度、購買パターン、購買状況、利用方法といった行動の仕方による分類軸のことです。
近年では、ニーズによる細分化もよく用いられます。例えば、地方在住の高校生にオンラインで学習したいという”ニーズ”があったとします。この時、「高校生」という人口統計的変数に基づく軸と「オンライン学習を利用したい」というニーズに基づいた軸によってセグメンテーションをすることが可能です。但し、「地方」といった軸でもセグメンテーションをすることは可能なので、自社サービスに適した軸を用意する必要があります。
Targetingとは、Segmentationにより細分化した市場の中から提供するサービスが参入するのに適した市場を選定することを意味しています。参入する市場を選定する際には、自社サービスの強みや市場のニーズや規模感を考慮するなど多角的な視点が必要です。例えば、アマゾンでは、セグメンテーションされた市場において中上流階級のネットユーザーをターゲットとしました。
Targetingを行う際の、最適な市場選定の基準として、3Cや6Rの活用が有効な場合があります。
3Cとは、Company(市場)・Competitor(競合)・Company(自社)の頭文字を取ったもので、市場決定に有効です。
6Rとは、Realistic scale(有効な規模)・Rank(優先順位)・Rate of growth(成長率)・Rival(競合)・Reach(到達可能性)・Response(測定可能性)の頭文字を取ったもので、市場決定に有効です。
また、Targetingの際に、よく使用されるマーケティング手法として以下があげられます。
細分化を無視し、様々な市場に同一サービスを提供する手法
例:食料品、日用雑貨等
複数の市場に対して、料金設定等を変えて異なるサービスを提供する手法
例:自動車、アパレル製品等
市場を絞って集中的にサービスを提供する手法
例:高級ブランド
Positioningとは、Targetingで選定した市場の競合調査を行うことで、市場におけるライバル企業と自社の立ち位置の把握を意味しています。ポジショニングマップという二次元のマトリックス図を用いて、二軸それぞれにそのサービスの価値を測る要素を置くことで、他社との位置関係を分析することができます。例えば、アマゾンではネット通販市場において自社をカスタマイズされたショッピング体験を提供するグローバルなマーケットであると考えています。
細分化した市場の規模感や将来性を見越した参入が重要です。例え、自社サービスに適した市場であったとしても利益が小さかったり下降産業であれば、参入しない方がいい場合もあります。従来はS→T→Pの順に分析を進めていくのがSTP分析の基本的な手法でしたが、現代社会の複雑化に伴い、Positioningを優先させるなど柔軟な対応が必要となってきています。